相続した土地や家の不動産売却|必要な税金と控除について
土地や家などの不動産は、代々相続をされて受け継がれるものがあります。
しかし、土地や家を相続したものの、なかなか活用出来ずに放置されてしまうケースがとても増えています。
現実的には、土地や建物を眠らせておくぐらいなら、所有する不動産を売却をした方が建設的な方法と言えるでしょう。
国や自治体としてもこのままではいけないという事で、様々な政策などを展開していますが、成果としてまだ出ておらず、休眠不動産を起こす起爆剤とはなっていません。
しかし、売却をする際に気になるのは、不動産売買に伴う税金だと思います。
実際に売却してしまった後で、税金に関して動き出すのではなく、事前に下調べをした上で、動き始める方が失敗せずに資産運用する事が出来ます。
そこで今回は、
「せっかく相続した不動産でも、全然活用せずに放置してしまってる…。売却しようにも税金が色々と課税されるんじゃ…?」
と悩まれているあなたに、不動産を売る場合に掛かってくる税金や節税効果のある特例控除についても詳しくお話していきます!
記事内容
相続した不動産の活用予定が無い場合は「売却」するのが吉
遺産相続で取得した不動産は売却した方がお得?
不動産は投資目的で所有するだけでなく、親から子へと相続することによって所有することもあります。
そんな時は、どのように活用すれば良いのか分からずに、相続した不動産をそのまま放置してしまっている方も少なくないと思います。
しかし、せっかく相続しても不動産を放置しておくのはよくありません。
なぜなら、不動産は活用していない状態ですと、時間の経過と共に所有者へ負担だけがのしかかってしまうからです。
相続して所有することになった不動産を放置することで、下記のようなデメリットが挙げることが出来ます。
- 不動産を放置するデメリット
- 固定資産税が掛かり払い続けなければならない
- 時間の経過により不動産価値が下がる
固定資産税がかかる
不動産というものは、所有しているだけで税金を納付する義務が発生します。
それが『固定資産税』となるのですが、その税額は所有している土地の評価額によって、大きく左右されます。
固定資産税は、次の計算式で算出されます。
固定資産税=課税標準×1.4%
課税標準というのは、土地の固定資産税を決める為の『土地の評価額』になるのですが、その評価額を元に課税される税金が決まります。
例えば、相続した不動産の評価額が3,000万円だった場合、【3,000万円×1.4%=42万円】の固定資産税が毎年掛かることになります。
放置によって、不動産の資産価値が下がる
家やマンションなどの建築物は、築年数が古くなればなるほど老朽化が進み、どんどん資産価値は下がっていきます。
新築の家は買った瞬間に2割ほど、25年後には価値ゼロというのが定説となっています。
また、建築物ではない土地としての不動産であっても、ほったらかし状態にしていると、荒廃が進み価値が付きにくくなってしまう傾向があります。
そうならない為には、土地を活用する予定が無かったとしても定期的な管理が必要になります。
不動産は放置しているだけでは資産ではなく負債となりますので、管理や活用をするのが難しそうな場合には売却を検討するようにしましょう。
- ここがポイント!
- 相続で得た不動産の活用予定が無い場合は、不動産放置によるデメリットを回避する為にも、不動産の売却を検討しよう!
不動産売却に伴う税金
印紙税
不動産を売却する際に発行する売買契約書には、『印紙税』が課税されます。
不動産売買の金額が1万円以下の場合は非課税となりますが、不動産の売却には大きな金額が伴うことになりますので、ほぼ100%印紙税が掛かることになります。
売買額ごとの印紙税は下記の通りです。(平成30年3月31日までは軽減措置がとられています)
不動産の売買金額 | 印紙税額 | 軽減措置後 |
1万円~ | 200円 | 200円 |
10万円~ | 400円 | 200円 |
50万円~ | 1,000円 | 500円 |
100万円~ | 2,000円 | 1,000円 |
500万円~ | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円~ | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円~ | 60,000円 | 30,000円 |
1億円~ | 100,000円 | 60,000円 |
5億円~ | 200,000円 | 160,000円 |
参考資料:国税庁|印紙税額
譲渡所得税
次に、『譲渡所得税』です。
譲渡所得税とは、不動産の売買によって利益が発生した場合に支払う税金となります。
譲渡所得税の課税対象となるのは、不動産を譲渡した際に所得となる収益額(譲渡所得)となり、譲渡収入(売却金額)から譲渡費用とその不動産の取得費を引いたものになります。
- 譲渡所得の計算式
- 譲渡所得(譲渡益) = 譲渡収入(売却金額) - (不動産の取得費① + 不動産の譲渡費②)
- ①不動産の購入にかかった代金、それに伴う税金、購入後に当不動産に投資した費用
- ②不動産を譲渡する為にかかった費用(仲介手数料や登記費用など)
譲渡収入は、買主から受け取った代金に加えて、固定資産税と都市計画税の精算金も該当します。
不動産の取得費と控除についての注意点
不動産の取得費には、『取得代金』と『取得諸費用』があります。
取得代金とは、購入・建築の代金で相続の場合でもなくなった方が負担した代金がこれにあたります。
対して取得諸費用は、【仲介手数料・印紙税・登録免許税・不動産取得税・借入金の利子・測量費・造成費】など、不動産取得に際して発生した費用や、増改築などの改良費・設備費用となります。
- 相続した不動産の場合の特例控除
- 相続して不動産を取得した場合、特例控除を受けることが出来ます。相続時に支払った『相続税額』を特例によって控除してもらう事で節税に繋がりますので、忘れないようにしましょう。
- ただし、支払った相続税を取得費として控除対象とする為には、相続税が発生してから3年10ヶ月以内の売却・譲渡の取引に対してとなります。
ここで注意が必要なのは、建物については、売る時までに減価償却で価値が失われてしまうので、減価償却費相当額を取得費から差し引かなければなりません。
また、土地や建物を相続している場合には、それらの取得費が分からない(不明な)事もありますので、そういった場合には『譲渡収入の5%』を取得費にする事になります。
【ここで注意すべきポイント!】
取得費が譲渡収入(売却代金)の5%に満たない場合でも5%にする事が可能になるのですが、逆に負担する税金が増えてしまい大きな損失を生み出すケースもあります。
2,000万円で取得した不動産を3,000万円で売却した場合には1,000万円の収益となりますが、5%で計算されてしまうと150万円の不動産を3,000万円で売却したとみなされ、収益額は2,850万円となってしまいます。
すると、本来の譲渡所得が1,000万円となるところが2,850万円とされ、譲渡所得に課税される税金が大きくなってしまうことに。
可能であれば、不動産取得費に伴う証明書は、探し出すのが得策と言えます。
不動産所有期間によって税率が異なる「譲渡所得税」
ここまでで算出できた譲渡所得に対して譲渡所得税が課税されますが、税額は不動産の所有期間によって変動します。
では譲渡所得税の税率について、詳しく見ていきましょう。
上記でお伝えした計算式で譲渡所得を出すことが出来たら、譲渡所得に対して下記の表の税率で計算します。
この税率は、不動産を所有している期間によって変わってきますので、下記を参考にして下さい。
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
長期譲渡所得 (10年) |
10% | 所得税額の 2.1% |
4% | 14.21% |
長期譲渡所得 (5年超) |
15% | 5% | 20.315% | |
短期譲渡所得 (5年以下) |
30% | 9% | 39.63% |
不動産を所有している期間が『5年』を超えている場合は『長期譲渡所得』といい、それ以下の期間の場合には『短期譲渡所得』となります。
長期譲渡所得には特別控除があるのですが、売却する不動産を10年以上所有していた場合には、所得税と住民税が特例として控除対象となりますので、それぞれ【10%】と【4%】まで税率が引き下げられます。
さらに、平成25年から平成49年までの25年間は、『復興特別所得税』が所得税に対して課税されるようになりました。
所得税の金額に対して【2.1%】が課税され、所得税と合わせて『復興特別所得税』を納税しなければなりません。
消費税
次に、相続した不動産の売却に掛かる税金として『消費税』があります。
この消費税は土地や家などの売買に対して発生するものではなく、不動産の売買仲介をしてくれた仲介業者に支払う仲介手数料にかかってくる税金となります。
知っておこう!仲介手数料の豆知識
不動産売買に関しての仲介手数料の金額は、売買価格に応じて上限額が決められており、200万円までは5%、200万円から400万円までは4%、400万円を超えると3%となります。
売買価格(税込)が200万円まで | 5% |
売買価格(税込)が200万円~400万円まで | 4%(+2万円) |
売買価格(税込)が400万円以上 | 3%(+6万円) |
「赤字の数字は何?」と疑問に思うでしょうが、上記の表は速算式を元にしています。
これにはちょっとしたからくりが…。
売買価格に対して、
- 200万円以下のゾーンに対しては5%を上限とした仲介手数料
- 200万円以上から400万円までのゾーンに対しては4%を上限とした仲介手数料
- 400万円を超えるゾーンに対しては3%を上限とした仲介手数料
となっています。
例として、400万円の売買価格に対しての仲介手数料を計算してみましょう。
- 正式な計算式
- 200万円×0.05(5%)=100,000円
- 200万円(400万円のうち200万円を超えた額)×0.04(4%)=80,000円
- 合計180,000円
- 速算式
- 400万円×0.03(3%)=120,000円
- 120,000円+60,000円=80,000円
- 合計180,000円
前者の計算式ですと、とても回りくどい計算となりますので、理論上数字が同じになる速算式を用いられています。
消費税は、この計算式で算出された仲介手数料の金額に課税され、税金として納付することになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した印紙税、譲渡所得税、消費税は、不動産の売却をする際に必ず関わることになる税金です。
その為、土地や家などの不動産売却に掛かる税金の知識(控除についての知識)に関しては、事前にしっかりと計算方法まで理解した上で、不動産会社に売買仲介の依頼をする事をおすすめします。
不動産売買に限ったことではありませんが、不動産の活用や売買はとても難しい知識が必要となる為、そのまま土地を放置してしまいがちになります。
しかし、ただ放置しているだけでは、毎年軽視出来ない程の固定資産税を請求されることになってしまいますので、活用予定の無い不動産を持ち続けるリスクはとても大きいものとなってしまいます。
今では、土地活用や不動産売買に関しては、一括査定や一括資料請求にて簡単にプロに依頼することが可能ですので、ご自身にとって最良の選択をする為にも、不要な土地は売却してしまうという選択も視野に入れるようにしましょう。